ペットロス コラム -愛する動物との別れ- #4

前回はヒトと動物の関係の歴史と愛着についてお話しました。社会的な背景から、動物たちが私たちの生活の中に入り、家族のような大切な存在になっているというのが、現代のヒトと身近な動物との関係です。では、そもそも、私たちはなぜこれほどまでに動物たちに魅力を感じるのでしょうか。どうしてこんなにもペットといわれる動物たちを飼いたがるのでしょうか。お金も手間(世話)もかかる動物と暮らすということはそれなりのメリットがあるはずです。「かわいいから!」と多くの飼い主さんが答えると思います。でも、身近な動物が私たちに与えてくれるものはそれだけではありません。動物たちが私たちに与えてくれるメリット、効果は大きく分けて3つあります。
 
 


かわいいね!
一つ目は、心理的効果です。これは先ほどの「かわいい!」と思う気持ちです。かわいい、愛おしいと思う時、ヒトの心は優しさや愛情にあふれています。心がほっこり温かくなる感じです。こういう気持ちの時って、不安や緊張が解けて心理的にリラックスした状態です。いわゆる“癒し”ということですね。動物たちの癒し効果は抜群です。また、動物と暮らすことは、命を預かることで、責任を伴います。小さな子どもや少し自分に自信のない人が、動物と暮らして日々のお世話の一端でも担うことは、その責任感を身に付けることとなります。そしてそれは自分を認め(自己肯定感)、自分を大切に思う気持ち(自尊感情)につながります。相手を想う気持ちは、自分を想う気持ちあってこそ、です。

ねえ、ねえ!
二つ目は、生理的・身体的効果です。イヌやネコをなでることによって心拍数や血圧が下がるという研究は、1980年代からすでに発表されてきました。イヌやネコの体温は38~39度で、人がふれて心地よさを感じる温度です。しかも柔らかい。あたたかくて柔らかいものをさわると、ヒトは気持ちよさを感じるものです。これは身体的にリラックスしている状態といえます。水槽の魚を見ているだけでもそのような状態になることも分かっています。そういえば病院の待合室にフェイクの水槽が置いてあったりもしますね。もちろんイヌとお散歩することは、日々の健康に効果的です。イヌがいなくなり散歩をしなくなって、足の筋力が衰えたという話を聞いたことがあります。

 
最後は社会的効果です。飼い主の名前は知らないけど、ワンちゃんの名前は知っているというイヌ友はいませんか?知らないヒトと突然会話をするなんて滅多にないことですが、知らないヒトともペットを通して話が始まる、というのはよくあることです。動物はヒトとヒトをつないでくれるいわゆる“社会的潤滑油”の働きをします。また、動物を飼育することにより、命の尊さや相手を思いやる気持ちを育むことができるとも言われています。共感性や協調性の促進です。日本でも青少年の凶悪な事件が起こるたびに “命の教育”として、家庭や教育の現場に動物を介入させる大切さがあげられます。ただし、これに関しては、ただ動物を飼えばいいというものではなく、動物が心地良い環境で過ごし、ヒトと動物の良好な関係が構築されて初めて子どもたちに効果があるものです。
私たちが動物から受け取るメリットは以上の3つがあります。普段私たちはそのようなことは考えずに動物と暮らしていますが、日々様々なことを与えてもらっているといます。このような効果をもっと社会的に活かしていこうという活動がアニマルセラピーと言えます。このコラムはペットロスについてなので、アニマルセラピーについては、また別の機会に。
 

さて、ペットブームと言われて久しいのですが、日本ではいつ頃からペットと言われる動物たちが多く飼われるようになったのでしょうか。厚生労働省から発表されている蓄犬頭数を見てみると、1990年代後半に大きく数を伸ばしているのが分かります。これはイヌの数だけですが、この時期に他の種も含めてペットが多くの家庭で飼われるようになったと考えることができます。現在はどのような状態かというと、左の通りです。15歳以下の子どもよりもイヌとネコの数の方が圧倒的に多いのです。しかもこの差は年々大きくなっています。イヌの数が徐々に減っていますが、それにも増して子どもの数が年々減少の一途をたどっているからです。多様化する社会のなかにあって、配偶者や子どもではなく動物を家族として選ぶ人たちがいることも事実です。様々な形で、ヒトと動物が幸せに暮らしていければいいなと思っています。
今日の1冊は『しりたい!やってみたい!アニマルセラピー』です。これは、私が所属するヤマザキ学園大学(現、ヤマザキ動物看護大学)の教員4名で執筆したものです。ヒトと動物の関係、しつけ(トレーニング)、ペットロス、そしてもちろんアニマルセラピーについてなど様々な内容を包括した1冊となっています。アニマルセラピーに興味のある方はもちろん、ワンちゃんと素敵な生活を送りたいと思っていらっしゃる飼い主さんにぜひ読んでいただきたいと著者一同願っています。イラストもかわいいですよ!